P--887 P--888 P--889 #1恵信尼消息 恵信尼消息 #21 (1)  [「恵信御房御筆」] こその十二月一日の御ふみ 同はつかあまりにたしかにみ候ぬ なによりも殿の御わうしやう 中〜はし めて申におよはす候 やまをいてゝ 六かくたうに百日こもらせ給て こせをいのらせ給けるに 九十五日 のあか月 しやうとくたいしのもんをむすひて しけんにあつからせ給て候けれは やかてそのあか月 い てさせ給て こせのたすからんするえんに あいまいらせんと たつねまいらせて ほうねん上人に あい まいらせて 又六かくたうに百日こもらせ給て候けるやうに 又百か日 ふるにもてるにも いかなるたい 事にも まいりてありしに たゝこせの事は よき人にもあしきにも おなしやうに しやうしいつへきみ ちをは たゝ一すちにおほせられ候しを うけ給はりさためて候しかは しやうにんのわたらせ給はんとこ ろには 人はいかにも申せ たとひ あくたうにわたらせ給へしと申とも せゝしやう〜にもまよいけれ はこそありけめとまて思まいらするみなれはと やう〜に人の申候し時もおほせ候しなり さて ひたち のしもつまと申候ところに さかいのかうと申ところに候しとき ゆめをみて候しやうは たうくやうかと P--890 おほへて ひんかしむきに御たうはたちて候に しんかくとおほえて 御たうのまへには たてあかししろ く候に たてあかしのにしに 御たうのまへに とりゐのやうなるに よこさまにわたりたるものに ほと けをかけまいらせて候か 一たいは たゝほとけの御かほにてはわたらせ給はて たゝひかりのま中 ほと けのつくわうのやうにて まさしき御かたちはみへさせ給はす たゝひかりはかりにてわたらせ給 いま一 たいは まさしき仏の御かほにてわたらせ給候しかは これはなにほとけにてわたらせ給そと申候へは 申 人はなに人ともおほえす あのひかりはかりにてわたらせ給は あれこそほうねん上人にてわたらせ給へ  せいしほさつにてわたらせ給そかしと申せは さて又 いま一たいはと申せは あれはくわんおんにてわた らせ給そかし あれこそせんしんの御房よと申とおほえて うちおとろきて候しにこそ ゆめにて候けりと は思て候しか さは候へとも さやうの事をは 人にも申さぬときゝ候しうへ あまかさやうの事申候らむ は けに〜しく人も思ましく候へは てんせい 人にも申さて 上人の御事はかりをは とのに申て候し かは ゆめにはしなわいあまたある中に これそしちむにてある 上人をは しよ〜に せいしほさつの けしんと ゆめにもみまいらする事 あまたありと申うへ せいしほさつは ちゑのかきりにて しかしな から ひかりにてわたらせ給と候しかとも くわんおんの御事は申さす候しかとも 心はかりは そのゝち うちまかせては思まいらせす候しなり かく御心へ候へし されは 御りんすはいかにもわたらせ給へ う たかひ思まいらせぬうへ おなし事なから ますかたも御りむすにあいまいらせて候ける おやこのちきり P--891 と申なから ふかくこそおほえ候へは うれしく候〜 又このくには こそのつくりもの ことにそんし候て あさましき事にて おほかた いのちいくへしとも おほえす候 中にところともかはり候ぬ 一ところならす ますかたと申 又おほかたはたのみて候人のり やうとも みなかやうに候うへ おほかたのせけんもそんして候あひた 中〜とかく申やるかたなく候也 かやうに候ほとに としころ候つるやつはらも おとこ二人 正月うせ候ぬ なにとして ものをもつくる へきやうも候はねは いよ〜せけんたのみなく候へとも いくほといくへきみにても候はぬに せけんを 心くるしく思へきにも候はねとも み一人にて候はねは これらかあるいは おやも候はぬおくろの女はう のおんなこ おのこゝ これに候うへ ますかたか子ともも たゝこれにこそ候へは なにとなくはゝめき たるやうにてこそ候へ いつれもいのちもありかたきやうにこそおほえ候へ      このもんそ 殿のひへのやまにたうそうつとめておはしましけるか やまをいてゝ 六かくたう      に百日こもらせ給て こせの事いのり申させ給ける 九十五日のあか月の御しけんのもんなり       こらん候へとて かきしるしてまいらせ候 #22 (2)  [「ゑちこの御文にて候」「此御表書は覚信御房御筆也」]  [「此一枚は端の御文のうへにまき具せられたり」] P--892 このもんをかきしるしてまいらせ候も いきさせ給て候しほとは 申てもえう候はねは申さす候しかと い まはかゝる人にてわたらせ給けりとも 御心はかりにもおほしめせとて しるしてまいらせ候也 よくかき 候はん人によくかゝせて もちまいらせ給へし 又あの御えいの一ふく ほしく思まいらせ候也 おさなく 御みのやつにておはしまし候しとしの四月十四日より かせ大事におはしまし候しときの事ともをかきしる して候也 ことしは八十にゝなり候也 おとゝしのしも月より こその五月まては いまや〜と時日をま ち候しかとも けふまてはしなて ことしのけかちにや うへしにもせんすらんとこそおほえ候へ かやう のたよりになにもまいらせぬ事こそ 心もとなくおほえ候へとも ちからなく候也 ますかた殿にも この ふみを おなし心に御つたへ候へ ものかく事ものうく候て へちに申候はす   [「弘長三年癸亥」]        二月十日 #23 (3)  [「此一紙ははしの御文にそへられたり」] せんしんの御房 くわんき三年四月十四日むまの時はかりより かさ心ちすこしおほえて そのゆふさりよりふして 大事に おはしますに こしひさをもうたせす てんせい かんひやう人をもよせす たゝおともせすしてふしてお P--893 はしませは 御身をさくれは あたゝかなる事火のことし かしらのうたせ給事もなのめならす さてふし て四日と申あか月 くるしきに まはさてあらんとおほせらるれは なにことそ たわことゝかや申事かと 申せは たわことにてもなし ふして二日と申日より 大きやうをよむ事ひまもなし たま〜めをふさけ は きやうのもんしの一時ものこらす きららかにつふさにみゆる也 さてこれこそ心へぬ事なれ 念仏の 信しんよりほかには なにことか心にかゝるへきと思て よく〜あんしてみれは この十七八ねんかその かみ けに〜しく三ふきやうをせんふよみて すさうりやくのためにとて よみはしめてありしを これ はなにことそ しゝんけう人しんなんちうてんきやうなむとて 身つから信し 人をおしへて信せしむる事 まことの仏おんをむくゐたてまつるものと信しなから みやうかうのほかにはなにことのふそくにて かな らすきやうをよまんとするやと思かへして よまさりしことの されはなほもすこしのこるところのありけ るや 人のしうしんしりきのしんは よく〜しりよあるへしとおもひなしてのちは きやうよむことはと ゝまりぬ さてふして四日と申あか月 まはさてあらんとは申也とおほせられて やかてあせたりて よく ならせ給て候し也 三ふきやうけに〜しく千ふよまんと候し事は しんれんはうの四のとし むさしのくにやらん かんつけ のくにやらん さぬきと申ところにて よみはしめて 四五日はかりありて 思かへして よませ給はて  ひたちへはおはしまして候しなり P--894 しんれんはうはひつしのとし三月三日のひるむまれて候しかは ことしは五十三やらんとそおほえ候   こうちやう三ねん二月十日                 恵信    [「徳治二年[丁未]四月十六日]   [この御うはかきはこ上の御て也 覚如しるす」]   [「上人の御事]   [ゑちこのあまこせんの御しるし文」] #24 (4) 御ふみの中に せんねんに くわんき三ねんの四月四日よりやませ給て候し時の事 かきしるして ふみの 中にいれて候に その時のにきには四月の十一日のあか月 きやうよむ事は まはさてあらんとおほせ候し は やかて四月の十一日のあか月としるして候けるに候 それをかそへ候には 八日にあたり候けるに候  四月の四日よりは 八日にあたり候也   わかさとの申させ給へ ゑしん #25 (5) もしたよりや候とて ゑちうへこのふみはつかはし候也 さても ひとゝせ 八十と申候しとし 大事のそ らうをして候しにも 八十三のとしそ一定とものしりたる人のふみともにも おなし心に申候とて ことし P--895 はさる事と思きりてさふらへは いきて候時 そとはをたてゝみ候はゝやとて 五ちうに候いしのたうを  たけ七さくにあつらへて候へは たふしつくると申候へは いてきて候はんにしたかひてたてゝみはやと思 候へとも こそのけかちに なにも ますかたのと これのと なにとなく おさなきものとも 上下あま た候を ころさしとし候しほとに ものもきすなりて候うへ しろきものを一もきす候へは      一人候 又おとほうしと申候しわらはをは とう四郎と申候そ それへまいれと申候 さ御心へ      あるへく候 けさかむすめは十七になり候也 さてことりと申女は こも一人も候はぬ時に 七      になり候めならはを やしなはせ候也 それはおやにつきてそれへまいるへく候也 よろつつく      しかたくてかたくてとゝめ候ぬ あなかしこ〜 #26 (6) たよりをよろこひて申候 たひ〜ひんには申候へとも まいりてや候らん ことしは八十三になり候か  こそことしは しにとしと申候へは よろつつねに申うけたまはりたく候へとも たしかなるたよりも候は す さていきて候時と思候て 五ちうに候たうの 七しやくに候いしのたうをあつらへて候へは このほと はしいたすへきよし申候へは いまはところともはなれ候て 下人ともみなにけうせ候ぬ よろつたよりな く候へとも いきて候時たてゝもみはやと思候て このほとしいたして候なれは これへもつほとになりて 候ときゝ候へは いかにしても いきて候時たてゝみはやと思候へとも いかやうにか候はんすらん その P--896 うちにも いかにもなり候はゝ こともゝたて候へかしと思て候 なにことも いきて候し時は つねに申 うけたまはりたくこそおほえ候へとも はる〜とくものよそなるやうにて候事 まめやかにおやこのちき りもなきやうにてこそおほえ候へ ことにはおとこにておはしまし候へは いとをしきことに 思まいらせ て候しかとも みまいらするまてこそ候はさらめ つねに申うけたまはる事たにも候はぬ事 よに心くるし くおほえ候   [「文永元年甲子」]        五月十三日      せんあく それへの との人ともは もと候しけさと申も むすめうせ候ぬ いまそれのむすめ      一人候 はゝめもそらうものにて候 さておとほうしと申候しは おとこになりて とう四郎と      申と 又めのわらはのふたはと申めのわらは ことしは十六になり候めのわらはゝ それへまい      らせよと申て候也 なにことも御ふみにつくしかたく候てとゝめ候ぬ 又もとよりのことり七こ      やしなはせて候        五月十三日(花押)      これは たしかなるたよりにて候 時に こまかに〜申たく候へとも たゝいまとて このた      よりいそき候へは こまかならす候 又このゑもんにうたう殿の 御ことは かけられまいらせ P--897      て候とて よろこひ申候也 このたよりはたしかに候へは なにこともこまかにおほせられ候へ      し あなかしこ #27 (7) たよりをよろこひて申候 さてはこその八月のころより とけはらのわつらはしく候しか ことにふれてよ くもなりへす候はかりそ わつらはしく候へとも そのほかはとしのけにて候へは いまはほれてさうたい なくこそ候へ ことしは八十六になり候そかし とらのとしのものにて候へは 又それへまいらせて候しや つはらも とかくなり候て ことりと申候としころのやつにて 三郎たと申候しか あいくして候か 入道 になり候て さいしんと申候 入道めには ちあるものゝなかのむまのせうとかや申て 御け人にて候もの ゝむすめの ことしは十やらんになり候を はゝはよにおたしく□□候しかゝと申てつかひ候しか ひとゝ せのうむひやうのとししにて候 をやも候はねは ことりもこなきものにて候時にあつけて候也 それ又け さと申候しむすめのなてしと申候しか よによく候しも うむひやうにうせ候ぬ そのはゝの候も としこ ろ かしらにはれものゝとしころ候しか それもたふし□□にて たのみなきと申候 そのむすめ一人候は ことしは廿になり候 それとことり 又い□□ 又それにのほりて候し時 おとほうしとて候しか このこ ろ□□四郎と申候は まいらせんと申候へは ちゝはゝうちすてゝはまいらしと こころにはまうし候と申 候へとも それはいかやうにもはからい候 □□ゐ中に□にみをいれてかはりをまいらせんとも くりさわ P--898 か候はんすれは申候へし たゝしかはりはいくほとかは候へきとそおほえ候 これらほとのおとこはよに□ □なく申候也 又こそてたひ〜たまはりて候 うれしさいまはよみちこそてにてきぬも候はんすれは 申 はかり候はすうれし□□也 いまはあまりきて候ものは さいこの時の事はなしては思はす候 いまは時日 をまつみにて候へは 又たしかならんひんにこそてたふへきよしおほせられて候し このゑもん入道のたよ りは たしかに候はんすらん 又さいしやう殿はありつきておはしまし候やらん よろつきんたちの事とも みなうけ給りたく候也 つくしかたくてとゝめ候ぬ あなかしこ〜   九月七日      又わかさ殿も いまはとしすこしよりてこそ おはしまし候らめ あはれ ゆかしくこそ思候へ      としよりては いかゝしくみて候人も ゆかしくみたくおほえ候けり かこのまへの事のいとを      しさ 上れんはうの事も思いてられて ゆかしくこそ候へ あなかしこ〜                              ちくせん   わかさ殿申させ給へ                   とひたのまきより #28 (8)  「わかさとの」 たよりをよろこひて申候 さてはことしまてあるへしと思はす候つれとも ことしは八十七やらむになり候 P--899 とらのとしのものにて候へは 八十七やらん八やらむになり候へは いまは時日をまちてこそ候へとも と しこそおそろしくなりて候へとも しわふく事候はねは つわきなとはく事候はす こしひさうたすると申 ことも たふしまては候はす たゝいぬのやうにてこそ候へとも ことしになり候へは あまりにものわす れをし候て ほれたるやうにこそ候へ さてもこそよりは よにおそろしき事ともおほく候也 又すりいの ものゝたよりに あやのきぬたひて候し事 申はかりなくおほえ候 いまは時日をまちてゐて候へは これ をやさいこにて候はむすらんとのみこそおほえ候へ たふしまても それよりたひて候しあやのこそてをこ そ さいこの時のと思てもちて候へ よにうれしくおほえ候 きぬのおもても いまたもちて候也 又きん たちの事 よにゆかしく うけ給はりたく候也 上のきんたちの御事も よにうけ給りたくおほえ候 あは れ このよにていまいちと みまいらせ 又みへまいらする事候へき わか身はこくらくへたゝいまにまい り候はむすれ なに事もくらからす みそなはしまいらすへく候へは かまへて御念仏申させ給て こくら くへまいりあはせ給へし なほ〜こくらくへまいりあひまいらせ候はんすれは なにこともくらからすこ そ候はんすれ 又このひんは これにちかく候みこのおいとかやと申ものゝひんに申候也 あまりにくらく 候て こまかならす候 又かまへて たしかならんたよりには わたすこしたひ候へ おわりに候 ゑもん 入道のたよりそたしかのたよりにて候へき それもこのところに□□ることの候へきやらんと きゝ候へと も いまたひろうせぬ事にて候也 又くわうす御せんのしゆきやうにくたるへきとかや おほせられて候し P--900 かとも これへはみへられす候也 又わかさとのゝ いまはおとなしく としよりておはし候らんと よに ゆかしくこそおほえ候へ かまへてねんふつ申て こくらくへまいりあはせ給へと候へし なによりも〜 きんたちの御事 こまかにおほせ候へ うけたまはりたく候也 おとゝしやらんむまれておはしまし候ける と うけ給はり候しは それもゆかしく思まいらせ候 又それへまいらせ候はむと申候しめのわらはも ひ とゝせのおゝうむひやうにおほくうせ候ぬ ことりと申候めのわらはも はやとしよりて候 ちゝは御けん 人にてむまのせうと申ものゝ むすめの候も それへまいらせんとて ことりと申にあつけて候へは よに ふたうけに候て かみなとも よにあさましけにて候也 たゝのわらはへにて いまいましけにて候めり  けさかむすめの わかはと申めのわらはの ことしは廿一になり候かはらみて この三月やらんにこうむへ く候へとも おのこゝならはちゝそとり候はんすらん さきにも いつゝになるおのこゝうみて候しかとも ちゝさうてんにて ちゝかとりて候 これもいかゝ候はんすらん わかはかはゝは かしらになにやらん  ゆゝしけなるはれものゝいてき候て はや十よねんになり候なるか いたつらものにて 時日をまつやうに 候と申候 それにのほりて候しおり おとほうしとて わらはにて候しか それへまいらすへきと申候へと も めこの候へは よもまいらんとは申候はしとおほえ候 あまかりんすし候なんのちには くりさわに申 おき候はんすれは まいれとおほせ候へし 又くりさわゝ なに事やらんのつみと申やまてらにふたん念仏 はしめ候はむするに なにとやらんせんし申ことの候へきとかや申けに候 五てうとのゝ御ためにと申候め P--901 り なにことも申たき事おほく候へとも あか月 たよりの候よし申候へは よるかき候へは よにくらく 候て よもこらんしへ候はしとて とゝめ候ぬ 又はりすこしたひ候へ このひんにても候へ 御ふみの中 にいれてたふへく候 なほ〜きんたちの御事 こまかにおほせたひ候へ うけ給はり候てたに なくさみ 候へく候 よろつつくしかたく候て とゝめ候ぬ 又さいさう殿 いまたひめきみにておはしまし候やらん あまりにくらく候て いかやうにかき候やらん よもこらんしへ候はし   三月十二日ゐの時 P--902